最終更新日
2026.10.04
小中高生(成長期)の投球障害「投げると肩が痛い」〜考えられる原因と復帰まで〜
「ボールを投げると肩が痛い」「以前より球速が出ない」「肩の奥に引っかかる感じがある」。こうした変化は、肩に負担がかかっているサインかもしれません。投球を繰り返すことで肩に痛みや損傷が生じる状態を「投球障害肩」と呼びます。一つの病名ではなく、骨や腱、関節唇など、さまざまな部位の障害を含む言葉です。投手に限らず、捕手や野手にも起こります。
中高生は骨格や筋力が発達する途中にあり、同じ年齢でも体の成熟度には違いがあります。そのため、肩の痛みを「筋肉痛」「投げすぎ」と一括りにせず、どの組織に問題があるかを確認することが大切です。
成長期にまず考えるのが「リトルリーグ肩」です。上腕骨の付け根にある、骨が成長する部分「骨端線」に繰り返し負荷がかかって生じます。投球時に肩から上腕の付け根が痛み、その周辺を押すと痛むことがあります。X線では骨端線の幅が広がるなどの変化を認めますが、初期には目立たない場合もあります。小学生だけの病気ではなく、骨端線が残っている中学生・高校生にも起こります。
次に、肩を支える筋肉や腱の過負荷による障害があります。「腱板」は、上腕骨の骨頭を安定させながら腕を動かす筋肉・腱の集まりです。投球を繰り返すことで痛みが生じ、腕を上げる、ひねる、力を入れるといった動作がつらくなることがあります。中高生では、成人にみられるような腱板の全層断裂はまれですが、部分的な損傷が生じることはあります。
肩の前方が痛む場合は、「上腕二頭筋長頭腱」の障害も考えます。これは、いわゆる力こぶの筋肉から肩関節につながる腱です。繰り返す負荷で腱やその周囲に炎症などが起こると、肩前面に圧痛が出たり、腕を前に上げる動作で痛んだりします。ただし、痛む場所だけではほかの病気と区別できません。
「肩が抜けそう」「投げると腕に力が入らない」という場合は、肩関節不安定症が関わることがあります。明らかな脱臼を経験していなくても、投球中に関節を安定して保てず、痛みや投球能力の低下につながることがあります。一方、もともと関節が柔らかい人もおり、肩が緩いだけで病気とは限りません。その緩さと症状が結びついているかを確認します。
肩の奥の痛みや、痛みを伴う引っかかりでは、「関節唇損傷」も鑑別に入ります。関節唇は、肩関節の受け皿の縁にある組織で、関節の安定に関わります。このうち上側の損傷を「SLAP〈スラップ〉損傷」と呼びます。投球時痛や脱力感を生じることがありますが、クリック音がするだけでSLAP損傷とは診断できません。また、中高生全体での正確な頻度は十分に分かっていません。
腕を後ろに引いてひねる投球動作で肩の後方が痛む場合には、腱板と関節の縁が接触して症状を起こす「インターナルインピンジメント」という病態も考えます。これは、肩の不安定性や動きの偏りなどが関わる場合があり、複数の問題が重なっていることもあります。
診察では、こうした病気を見分けるために、痛む場所、投球のどの場面で痛むか、圧痛、可動域、筋力などを調べます。試合だけでなく、ブルペン、守備練習、自主練習を含めた投球量も重要です。肩だけでなく、肩甲骨や体幹、股関節の動きも確認します。
投球側の肩は、反対側より内側にひねりにくくなることがあり、「GIRD〈ガード〉」と呼ばれます。肩後方の筋肉などの硬さが関わる一方、成長に伴う骨の形の適応による場合もあります。左右差があるからといって、無理にストレッチで同じ角度にする必要はありません。痛みや、外側へひねる動きも合わせて評価します。
画像検査は疑う病気に応じて選びます。X線で骨や骨端線を、超音波で腱などの状態や動きを確認し、必要に応じてMRIで骨の内部や関節唇を調べます。CTは骨の形を詳しく確認する場合などに用います。画像に変化があっても、それが痛みの原因とは限らないため、診察所見との一致が大切です。
治療は、痛みを誘発する投球を休み、負荷を調整することから始めます。その間も、患部に負担をかけない運動は可能です。医師や理学療法士と相談し、肩を支える筋肉の機能や全身の動きを整えます。多くは保存療法から取り組みますが、反復する脱臼や、十分な治療でも改善しない構造的損傷では手術を検討することもあります。
復帰は、休んだ日数だけで決めません。痛み、圧痛、可動域、筋機能を確認し、必要に応じて画像も評価したうえで、投球の距離・球数・強度を段階的に増やします。繰り返す痛みや翌日まで残る症状があれば、投球を中止して相談しましょう。突然の強い痛み、変形、しびれ、明らかな脱力は速やかな受診が必要です。
「試合に出たい」という気持ちは自然です。その希望をかなえるためにも、選手が痛みを伝えやすい環境を保護者や指導者とつくり、体の回復に合わせて復帰を進めていきましょう。

