運動、食事、睡眠などの生活習慣と慢性疼痛の関係の症状や治療、予防について

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最終更新日

2026.11.01

運動、食事、睡眠などの生活習慣と慢性疼痛の関係

長引く痛みの治療で、「適度に運動しましょう」「食事や睡眠を整えましょう」と言われることがあります。こうした助言には、体力づくりだけでなく、痛みを調節する神経の働きや、体内の炎症に働きかけるという医学的な意味があります。生活習慣を整えることは、薬やリハビリテーションとともに、痛みを和らげるための非常に重要な土台になるのです。

まず知っておきたいのが、「痛覚閾値」という言葉です。これは、刺激を痛みとして感じ始める境目のことです。閾値が低くなると、弱い刺激でも痛みを感じやすくなります。慢性疼痛では、病気やけがそのものに加えて、痛みを伝える神経が過敏になったり、脳や脊髄で痛みを抑える仕組みが十分に働かなかったりすることがあります。つまり、痛みの強さは、体の傷みの程度だけで決まるわけではありません。

運動には、この痛みの感じ方を変える働きがあります。運動後に、同じ刺激でも痛みを感じにくくなる現象を「運動誘発性痛覚低下」と呼びます。背景には、体内の鎮痛物質や、脳から脊髄へと痛みの信号を抑える仕組みなどの関与が考えられています。実際に、過体重の男性を対象とした比較試験では、中程度の強さの自転車運動を6週間続けた群で、下半身の圧迫刺激に対する痛覚閾値が上昇しました。ただし、高強度の運動では同じ効果が得られず、「強く運動するほどよい」とはいえません。

また、慢性疼痛のある方では、運動による鎮痛反応が弱かったり、一時的に痛みが増したりすることもあります。実験で測る痛覚閾値の変化と、日常の痛みの改善も同じではありません。そのため、痛みを我慢して追い込むより、散歩や軽い筋力運動などを体調に合わせて続けることが大切です。運動後から翌日にかけての反応を見ながら、医師や理学療法士と量を調整しましょう。

食事との関係で注目されているのが、「慢性の低度炎症」です。これは、体内で弱い炎症反応が長く続く状態を指します。炎症に関わる物質は、痛みを伝える神経を敏感にすることがあります。ただし、慢性疼痛のすべてが炎症によるものではなく、炎症の検査値が正常でも痛みが続くことはあります。

野菜、果物、豆類、全粒穀物、魚、ナッツ、オリーブ油などを多く取り入れる「地中海食」は、炎症との関係が研究されています。心血管疾患のリスクが高い成人を対象とした無作為化比較試験では、地中海食を続けることで、一部の炎症指標が低下しました。食事を整えることが、慢性炎症を和らげる可能性を示す結果です。ただし、これは「その食事で慢性疼痛が必ず改善する」と証明したものではありません。

日々の食卓では、特別な食品に頼るより、野菜の副菜を増やす、魚や大豆製品を取り入れる、菓子や加工肉に偏らないようにする、といった工夫から始められます。筋肉を保つためのたんぱく質や、必要なエネルギーを確保することも大切です。痛みを治そうとして極端な食事制限をすると、かえって体力を落とすことがあります。

睡眠は、痛覚閾値と炎症の両方に関係します。健康な成人を対象にした無作為化試験では、夜間に繰り返し睡眠を中断すると、熱を痛いと感じる閾値が低下しました。その変化には、深い睡眠の減少と、免疫細胞の炎症反応の活性化が関わることが示されました。別の小規模試験でも、睡眠時間を制限すると炎症に関わる物質「IL-6(アイエルシックス)」が増え、その増加が痛みの訴えの増加と関連していました。

これらは、睡眠不足が痛みを強める生物学的な仕組みを示す研究です。一方、「よく眠れば、すべての慢性疼痛で閾値が上がり、炎症が改善する」とまでは断定できません。それでも、痛みで眠れず、眠れないことで痛みに敏感になる悪循環を減らすために、睡眠への対応は重要です。朝の起床時刻をそろえ、日中に光を浴び、寝酒や夕方以降のカフェインを控えることから始めましょう。不眠が続く場合には、認知行動療法などの治療も選択肢になります。

運動、食事、睡眠を整えることは、単なる気分転換ではありません。神経の痛み調節や炎症反応に働きかけ、痛みと付き合いやすい体の状態を目指す取り組みです。効果には個人差があり、改善しないことが努力不足を意味するわけでもありません。治療を続けながら、無理なく続く習慣を一つずつ増やしていきましょう。

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